2026.03.28 SPECIAL TALK 松居大悟 × 玉置玲央 × 前田敦子【VOL.03】
2002年に阿佐ヶ谷スパイダースが上演した衝撃作『ポルノ』。その中で強烈な印象を放つ国旗耕二と美和子のカップル。このカップルを演じる玉置と前田、そして玉置と上演プランを温めてきた松居が、今、この作品を立ち上げることへの思いを語り合う。
第3回 技術や知識、経験ではなくパッションで
玉置 気がつけば、大悟と『イヌの日』(16年)をやってから10年経っているけど。
松居 そうだね。『イヌの日』をやる数年前は、劇団とプロデュース公演で大変だった時期で。それでいったん演劇を休んで映画を作っていたけど、そこからまた演劇をやることになったとき、『ポルノ』は本多劇場くらいの大きさがないとできないけど、『イヌの日』なら小さい劇場でもできると思って、圭史さんに相談して。そのときには玲央もいたよね。
玉置 そう。そして『イヌの日』をやっているときに、いつか『ポルノ』をやりたいという話はしていたんだよね。
前田 じゃあ、私が初めて松居さんと下北で会ったときは、まだ元気だった頃だね。(松居に)すごく不思議な出会いでしたよね?
松居 そうだね。『ごきげんさマイポレンド』(14年)のマチソワの間に、(うぇるとん)東と下北の街を歩いていたら、前田さんがいて。「前田さんだ!」と思ったら「松居さん、なにしてるですか?」と話しかけられて、「いや今駅前で本番中で」と言ったんですよ。
前田 それで「このあと、夜公演はありますか?」と聞いて。
松居 「あります」と答えたら「行きます」と言ってくれて、そのまま観に来てくれたんだよね。
前田 それで観に行ったらすごく面白かったです。
玉置 じゃあ意外と付き合いは長いというか、下北での出会いがなかったら、このカンパニーになっていなかったかもしれない?
松居 そうかもしれない。で、そのあとドラマ『バイプレイヤーズ』とか、映画『くれなずめ』『不死身ラヴァーズ』とか、濃いめの作品でご一緒して。
玉置 下北で出会う前に、なにか作品をやっていたわけじゃないんでしょう?
前田 やっていないですね。
松居 だから声をかけられて「自分のことを知ってくれてるんだ」と思った。……ちょっと話を戻すと、『ポルノ』をやるには、大きい装置で坂も作り込まないといけないし、演出家としての経験値も必要だし、玲央に国旗をやってほしかったから、お互いにこの作品ができるところまでいかないと、と思ってましたね。
玉置 しかるべき準備をするために、『イヌの日』から10年空いたということだね。初演当時、それこそ(中山)祐一朗さんとか、伊達さんがどういう作り方をしていたのか、どういう心持ちで臨んでいたのか……。稽古にしても本番にしても想像するしかないですけど、台本を書いた圭史さんも含め、圧倒的な熱量を持ってやっていたと思うんですよ。当時の年齢ゆえのパッションというか。今日の本読みではそういう印象がありました。そうでなければ、乗り越えられないとこがいっぱいあるなと思ったんですよね。だから技術や知識、経験で乗り越えようとは思わなかった。こちらももう1回、パッションで乗り越えるべきだなって。40歳のパッションでやれるのか、20代当時の自分の熱量をなんとか掘り返してやるのか……、そこはまだわからないですけど(笑)、ちゃんと熱量で突破しようと思いました。技術みたいなものは勝手についてくると思うので、とにかく熱量をちゃんと持ってやらないと。
松居 僕は『ポルノ』の初演を福岡で観ましたけど、当時は小劇場シーンのことも知らないし、テレビに出てる人だけが有名人だと思っていたんです。だから阿佐ヶ谷スパイダースの人たちのことも、観たことがないわけですよ。でも、知らない人たちが衝撃的なお芝居をしていた。知らなかったからこそ「こういう世界があるんだ」と思ったし、その熱量を信じられたというか。いちばん最初の話に戻るけど、だからその衝撃を20年引きずることになった。今日も読み合わせをしてみたけど、やっぱり登場人物それぞれに正義や信念があって、それがちょっとズレているから、物語が予期せぬ方向に転がっていく。そういう意味ではさっきも言った通り、ちょっと作り方を知れたような気がしますし、さらに強い方向に向けて作れたらいいなと思います。


